歌舞伎を見たいな~と思っても、昔の言葉でセリフを言われてもわからないし、なんか古典芸能というだけで難しそうだし・・・と、二の足を踏む方も多いのではないでしょうか。
でも、歌舞伎ももともとは普通の娯楽劇ですから、そんなに堅苦しく考える必要なんてありません^^
歌舞伎を見に行きたいけれど、どんなものから見ればいいの?とお悩みの方必見!
今回は、たくさん見てきた歌舞伎の演目の中から、歌舞伎初心者の方におすすめの演目をご紹介しますね♪
1.助六由縁江戸桜
助六由縁江戸桜(すけろく ゆかりの えどざくら)は、市川団十郎・海老蔵の家に伝わる歌舞伎十八番と呼ばれるものの一つです。
曾我五郎(そがのごろう)から名前を変えた花川戸助六(はながわどのすけろく)が、失われた家宝の刀を探すために、誰彼かまわず喧嘩を売って刀を抜かせようとします。
恋人の遊女・揚巻(あげまき)も絡んで、助六は偉そうな人や遊び慣れていそうな人に、言いたい放題言うのです。
強くてかっこよくて弁のたつ助六と、花魁という最高位の遊女・揚巻の豪華絢爛な衣装、助六や揚巻のリズムに乗った痛快な啖呵、助六にやっつけられるコミカルな敵役たち…市川家に伝わる江戸荒事(あらごと)の完成された形を、気楽にお楽しみください♪
市川本家以外が「助六」を上演するときは、「助六曲輪江戸櫻」(すけろく くるわの えどざくら)とか「助六曲輪菊」(すけろく くるわの ももよぐさ)などと、名前が少し変わります。
これは一種の著作権みたいなものなんでしょうね。
2.勧進帳
勧進帳(かんじんちょう)は、江戸時代に能の「安宅」(あたか)をもとに作られた歌舞伎で、歌舞伎十八番の一つです。
兄の源頼朝(みなもとの よりとも)に追われて逃げる義経(よしつね)主従は、安宅関(あたかのせき)に差し掛かります。
義経が山伏に変装しているという情報から、山伏姿の義経一行を疑う関守の富樫(とがし)。
それに対して、弁慶(べんけい)は本物の山伏だという事を証明するために、何も書いていない巻物を、寺院建設の寄付金集め…つまり勧進のための趣意書だとして読みあげます。
いったんは疑いを晴らして通行許可がおりますが、最後についていく従者に変装した義経が、顔が似ていると見現され、絶体絶命…!
その時弁慶は、持っている錫杖(しゃくじょう)で義経を何度も打ち据えます。お前が判官なんかに似ているから旅がはかどらない、と怒りながら。
それを見た富樫は、弁慶の心情にうたれて通行を改めて許可し、お詫びとして酒をふるまうのです。
主人義経を守り抜こうとする弁慶の忠義・その心にうたれて、わかっていながら義経を逃がす富樫の情(たぶん責任を取って切腹まで覚悟しながらでしょうね)という心理描写・弁慶が振る舞い酒を自分一人で引き受けて、「延年の舞」を踊る間に義経と他の家来を目立たないように先に行かせる場面。
これらが、この演目の見どころです^^
また、弁慶が白紙の巻物を趣意書として読み上げる「読み上げ」、なおも疑う富樫が仏教知識を問う「山伏問答」を次々クリアしていく場面は、迫力があります。
主人を打ち据えた弁慶が人目のないところで義経に詫びる様子は、背景に流れる長唄の「 ついに泣かぬ弁慶も一期(いちご)の涙ぞ殊勝なる、判官(ほうがん)御手をとり給い」で言い尽くされ、目立った演技のない義経役者の品格が問われる場面ですね。
幕が下りてから、花道に独り残った弁慶が「飛び六方」で引っ込む様子は、自然と拍手がおこります。
3.心中天網島
心中天網島(しんじゅう てんの あみじま)は、近松門左衛門(ちかまつ もんざえもん)作の同名の人形浄瑠璃を歌舞伎化したもので、上方歌舞伎の名作の一つです。
江戸時代は江戸と大坂に分かれて歌舞伎が発展し、大阪では近松門左衛門原作のものが上方歌舞伎として人気がありました。
商売にも支障が出てきたので、妻のおさんは小春に別れて欲しいと手紙を書きます。
手紙を見た小春は、心にもない愛想づかしをして治兵衛をおさんのもとに帰そうとしますが、おさんは小春が治兵衛と別れれば死ぬ気だと気付き、小春を治兵衛のために身請けしようと金の工面をします。
おさんの父親は怒りながらも、娘を離縁させ、小春を迎えられる環境を作ろうとしますが、治兵衛は、小春を身請けしようとしていた恋敵の太兵衛と喧嘩になり太兵衛を殺してしまいます。
人殺しになった以上心中しか道はありません。
こっそり家を出た治兵衛と小春は、網島まで死の道行きをしますが、最後に一緒に死んだのでは妻の小春への義理が立たないと、治兵衛は小春を殺した後、離れたところで命を絶ちます。
近松門左衛門は当時実際にあった心中をヒントに次々に作品を作ったので、いわば事件物の再現ドラマのような位置づけですが、現代でも上演される作品が多くあるのは、人間の本質的な部分に迫っているからでしょう。
恋というどうしようもできない心の動きと、義理と愛がせめぎ合う上方世話物の傑作です。
4.与話情浮名横櫛
与話情浮名横櫛(よはなさけ うきなのよこぐし)は、当時の現代劇である世話物です。
「切られ与三郎」の名前で知られる「与話情浮名横櫛」は、江戸の市井に生きる小悪党が登場人物です。
ストーリーはシンプルですが、「しがねぇ恋の情けが仇(あだ) 命の綱の切れたのをどう取り留めてか 木更津からめぐる月日も三年(みとせ)越し・・・」で始まる与三郎の長台詞はリズムが良く、二枚目役者が演じる与三郎は身体中に描いた傷跡も美しいです。
5.春興鏡獅子
春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)は、歌舞伎では所作事(しょさごと)と言われる舞踊の演目です。
前半は美しい女小姓・弥生(やよい)が、獅子頭を手に持って踊ります。
後半は一転して、獅子の精に乗り移られ、長いたてがみのような毛をかぶって勇壮な踊りになります。毛ぶりという、身長よりも長い毛をグルグル振り回す踊りです。
前半の弥生と後半の獅子の精を1人で演じますから、純粋に女形(おやま)だけの人には演じにくく、亡き中村勘三郎丈のように男女両方できる人の当たり役になっています。
まとめ
歌舞伎初心者の方におすすめの演目をご紹介しましたが、いかがでしたか?
長年歌舞伎を見てきましたが、江戸時代には5時間以上かけて全編上演していたものが、今は全部上演する通し狂言はあまりなく、1時間程度の名場面だけを抜き出して上演することが多くなりました。
本来は5時間のものが1時間に短縮されるわけですから、話の内容がわかりにくい部分もあるかもしれません。
そのため、歌舞伎を見る前に、全体のストーリーをざっと把握しておくことをおすすめします。
こちらの記事を参考にして頂いて、ぜひ歌舞伎の世界を楽しんでくださいね♪
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